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製品を買った顧客が、売り手の思いもよらなかった「馬鹿な」使い方をしたために事故が起こったという話はよくききます。

 

死亡事故ならニュースになりますが、死亡しておらず怪我をした程度の事故は噂にも登ってきません。ですから、年間で「顧客責任による事故」は恐ろしいほどの回数起きているはずです。

 

一つの死亡事故の裏には300件のヒヤリ・ハットが潜んでいるといいますから(ハインリッヒの法則)。

 

記憶に新しい「ドラム式洗濯機に閉じ込められ幼児が死亡」した事故。

 

これは、誰の責任で起きた事故だったのでしょうか。

 

フザケて洗濯機の中に入った男の子?
男の子をよく監視していなかった親?
ドラム式洗濯機が中から閉められるように設計した設計士?

 

問題提起をしておいて何ですが、ここでは責任者を割り出すのが目的ではありません。

 

そうではなくて、「たとえ顧客に責任があろうとも、その顧客のやりそうな”ありえない馬鹿な行動”を事前に予想し、設計に組み入れた製品やサービスを提供できる」会社がこれから求められる会社である、ということです。

 

そして、どうしたら「顧客の馬鹿な行動」を予測できるか、というと、これはもう
子供の心で設計するしかないんじゃないかな。と思います。

または、製品のリリース前に子供に触ってもらいます。いたずらっこがいいですね(笑)

 

マッサージ器を首に挟んで死亡という事故のニュースを聞いたときは、「ああ、やりがちだよね」と思ってしまう人は多数いるはずです。

 

ということは、製品に「足のマッサージの用途以外には使わないでください」と書くのではなく、製品を足のマッサージの用途以外には使えなくしてしまう必要があります。

 

確かに足のマッサージ以外に使わない顧客は「バカ」ですし、自己責任で死んだと言えますが、そもそも顧客は説明書や注意書きを読みません。

 

子どもと同じです。とりあえず動かしてみて、新たな用途を自分で生み出してしまうものです(天才としか言えないくらいすごいですww)。

 

ドラム式洗濯機も、見た目が普通の洗濯機と比べたらカッコいいから、つい入りたくなってしまうと思うんです。子供はね。うちの子たちも家にドラム式洗濯機が届いたときは入りたそうにしていましたし。

 

また、六本木ヒルズの回転式ドアも、子供は絶対に突撃したいと思うはずです。

 

ドアが閉まるタイミングを見計らってスライディングとかしたくなるのが当たり前です。
子供ですもの。

 

バカにしか見えませんが、子供って本当そういう生き物なんです。特に男の子。

 

製品の供給者側は、顧客のそうした馬鹿な使い方を予め設計の段階で組み入れておくべきです。

 

Trizの技術進化のトレンド30に「設計方法論」があるのですが、そこに以下の様な記述がありました。

 

試行錯誤 ⇒ (略) ⇒ クロスカップリング効果 ⇒ 「マーフィーの法則」を取り入れた設計

 

左から右へ進化していきます。右へ行くほど望ましいわけです。

この設計方法論の一番右(最先端)の状態は「マーフィーの法則」を取り入れた設計です。

 

「マーフィーの法則」とは、ここでは、「もし何かが悪い方向に行くのが可能なら、それは実際に悪い方向にいくだろう」という法則です。

 

つまり、子供がイタズラするのが可能なら、子供は実際にイタズラするだろうと設計の段階で考えてイタズラが出来ないように、またはイタズラしても事故が起きないように設計します。

 

ドラム式洗濯機でいうと、内側から閉められないように設計します。

 

ここまで考えぬいた設計をするのは手間ですし、顧客が正しい使い方をすれば何の問題もないわけですが、顧客の予想外の行動すらも設計に組み入れるという万全の体制(おもてなし設計とでもいいましょうか)が技術の最先端のトレンドを先取りしているわけです。

 

そして、そんな会社の製品は「信頼性」という何者にも代えがたい財産になります。

 

以前「市場の進化」についての記事を書きましたが、顧客はドリルではなくドリルの穴が欲しい、つまり製品自体よりもその製品がもたらす機能が欲しいわけですから出来るなら製品はほしくないのです。

 

「製品がもたらす機能」よりも「製品の所有権」が欲しいと思う人は少ないでしょう。一度所有してしまうと修理費用など自分持ちになってしまいますから。

 

それよりは、製品はレンタルでメンテナンスは会社がやってくれた方が嬉しいはずです。

 

顧客は製品のもたらす機能だけを手に入れられるのが顧客にとってのベストな問題解決策なわけです。

 

そして、それを実現することの出来る会社がこれから求められる会社でしょう。

 

「変な使い方をするほうが悪い」という常識を一度捨てて、「顧客はあり得ないことをしてしまうものだ」ということを考慮して製品設計できると、顧客から喜ばれ選ばれる会社になるでしょう。