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この絵を見て何を思い浮かべますか?(*キューピー人形の絵。紛失したので載せていません。すみません)

日本では60パーセント以上の人が「マヨネーズ」を思い浮かべるそうです。

 

では、「ローズオニール」と聞いて何を思い浮かべますか?

何も思い浮かばない?

 

そんな人が大半だと思います。

ローズオニールはアメリカの著作家で、キューピーの生みの親です。

 

今から100年以上前にアメリカでローズオニールのキューピーは大ヒットしました。その愛らしさ・清潔さからキューピーのキャラクターは食品や衛生用品に商標として使用されてきました。

 

日本でも1915年にキューピー株式会社から商標が出願されています。
ほぼ同じ時期に、牛乳石鹸株式会社からも商標登録出願がされています。
他にも銀行なんかからも商標登録出願がされています。

 

さて、ここで疑問が生じてきます。
「キューピーはローズオニールの著作物なのに商標登録できるの?」と。

 

結論としては、可能です。

 

まず、ローズオニールから許諾を得れば当然のこと、許諾を得なくても商標登録出願をすることができます。

なぜなら、商標は創作物ではなくて選択物だからです。
(意味が分からない人は「商標法の基礎」をご覧ください)

 

しかし、他人の著作権があることからちょっと困ったことが起こります。

 

「その商標登録出願の日前に生じた他人の著作権と抵触するときは、指定商品又は指定役務務のうち抵触する部分についてその態様により登録商標の使用をすることができない。」

 

とされているからです(商標法29条)。

 

ただし、それにさえ気を付ければ商標は早い者勝ちですので、先に出願してしまえばそのキャラクターを使って指定した業務を独占できます。

 

キューピーは非常に魅力的なキャラクターですので、キューピー株式会社が成長するのに多大な貢献をしたことは確実です。

 

・・・ただし、同時に他人の著作物だからこそ、キューピー株式会社は苦しむことになります。

 

まず、関係ない他人がキューピーやキューピー人形を会社名にしたりサービスを始めても法律的に何も言えません。

 

日本人なら誰でも知っているほど大企業に成長したキューピー株式会社ですが、キューピー株式会社の関連企業と思われてしまいそうな名前の会社も存在します。

 

たとえば、貨物輸送の会社であるキューピーサービス有限会社です。

 

1992年にキューピーサービス有限会社は「キューピー引越センター」なる商標等を「貨物自動車による輸送」について出願しています。

 

この会社はキューピー株式会社とは何の関係もありません。

 

しかし、キューピーサービス有限会社と取引をした人はキューピー株式会社の関連会社であると勘違いしている人が多いようです。

 

そのため、キューピー株式会社はキューピーサービス有限会社に対し商標登録無効審判を請求したのですが、結局キューピーサービス有限会社の商標登録を消滅させることは出来ませんでした。

 

ちなみにこれがキューピーサービス有限会社の商標です。

 

キューピー株式会社のキューピー人形と似ているでしょうか?

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裁判所では類似しないと判断されました。

 

マヨネーズやドレッシングを輸送することは通常行われることからもキューピーサービス有限会社はキューピー株式会社の子会社と勘違いされてしまう可能性が高いにも関わらずです。

 

キューピー株式会社にとっては悔しい結果です。

 

これがもし他人の著作物ではなく、自社の完全オリジナルのキャラクターだったらこんなことにはならなかったのに・・・。

 

これほど有名・大企業に育っても、他人の著作物を使っていた場合には商標権で苦労するのです。

 

ただし、キューピーをこれほど有名にしたキューピー株式会社の企業努力が認められた例もあります。
ローズオニールの著作権を管理していた人から日本での著作権を譲り受けた日本人が「ローズオニールキューピー」という商標を出願したのですが、言葉だけ、絵柄だけの商標登録は認められましたが、絵プラス言葉の商標は認められませんでした。

 

なぜなら、キューピー株式会社のキューピーを想起させると判断されたからです。
最初に書いたように、ローズオニールの名前は日本ではまったく知られておらず、キューピーといえばキューピー株式会社と認識されるという取引の実情を考えての判断です。
これは妥当な判断だと思われます。

 

いくら正当な権利者だろうが、「業務上の信用を築いた」というキューピー株式会社の信用にただ乗りすることが許されるべきではないのです。

 

ちなみに、ローズオニール氏が無くなってから既に70年以上経っているので既にキューピーの著作権は切れています。
誰でも自由にキューピーを使えます。

 

ただし、キューピー株式会社の商標権の範囲内では使用しないように事前に商標調査をしないと商標権の侵害になってしまうので気を付けてください。

 

キューピーのケースは著作権と商標権の問題が複雑に絡み合った難しい問題です。
弁理士試験受験生は商標法を一通り勉強をした後に考えてみてください。4条や29条だけ勉強しただけではなかなか理解できないと思います。

 

また、商標は創作物ではなく選択物だということはビジネスについて考えるときに非常に重要になります。

 

たとえば、短期間で自社の商標を有名にしたい場合には、既に人気のある絵柄などを自社の商標として採用すれば良いのです。

 

ラブライブに出てくる美少女を自社商標として採用すれば、ラブライバーたちはその商品が何であろうと買いたくなるでしょうし、話題になること請け合いです。

 

ただし、キューピー株式会社のように、後に苦労することになるので、他人の著作物を商標として使用する場合には細心の注意を払ってください。
商標の維持費だけでもとんでもない金額になりますし。事実、キューピー株式会社の商標維持費は普通の会社と桁が違います。

 

なお、キューピー株式会社は過去には「兵器」について出願し物議を醸しだしたこともありますが、他社に変な出願をされないように防御的に出願しただけです。
防護で出していないのは類似の範囲についても保護されるようにとのことでしょう。
防護は取れるのに普通商標で出願する例はよくあります。

 

商標法を知らない人にとっては驚くような出願ですが、弁理士受験生はこんなことで驚いたりしないでください。

 

ビジネスに携わる人は、自社商標が有名になった数十年後のことも考えて商標戦略を練ってください。

なお、こちらの私のサイトで知財について効率的に学べます。