特許法「審決をもつてこれを却下することができる」と「却下する」(特135条)

令和2年度意匠法9問の枝の一つにこのような問題が出題されています。

 

○か×か。

意匠登録を受ける権利が共有の場合、共有者の一部の者が拒絶査定不服審判を請求しても、審決を却下される

 

これ、条文に詳しい人ほど×にしてしまいそうです。

まず、共有の話ですから準特132条3項があがると思います。

特許法132条第3項 特許権又は特許を受ける権利の共有者がその共有に係る権利について審判を請求するときは、共有者の全員が共同して請求しなければならない。

続いて、135条も準用されています。

不適法な審判の請求であつて、その補正をすることができないものについては、被請求人に答弁書を提出する機会を与えないで、審決をもつてこれを却下することができる。

 

したがって、「できる」のだから「却下されない場合がある」と考えてしまいそうです。。

しかし、特許庁の解答を見ると○になるようです。

 

どういうことだろうと思ってゼミをお願いしている先生に相談してみました。

結果として我々は「135条で却下されない場合は無いと特許庁は考えていると思われる」という結論に達しました。

135条は、出願手続きの場面では18条の2に相当する条文になりますが、18条の2は「手続きを却下するものとする」とあります。そしてその説明が青本の字句の解釈にあります。

〈するものとする〉特許法18条(手続の却下)の規定では「却下することができる」としているのに対して、本条では「却下するものとする」としているのは、本条が不適法でかつ補正不能な手続についての却下処分の原則的な規定であり、そのような手続については他の方法をとる裁量の余地がないことによる

また、審判便覧も「却下する」という表現を使っています。
これらのことから、上記結論に達したわけです。

青本レベルを超えて審判便覧レベルの問題ですね。枝の一つであり他の問題で簡単に解答出来るので良いのですが。