コロナ治療薬『アビガン』人民解放軍が取得した国際特許(?)

デイリー新潮の記事によると、「新型コロナにも効果が認められる抗インフルエンザウイルス薬アビガンについて、中国の人民解放軍が「用途特許」を出願、同国の国家知識産権局(CNIPA)が特許を認めたそうです。

上記文章の一番最初に挙げたように、デイリー新潮がそう言っています。
デイリー新潮、すなわち、「大衆向け娯楽メディア」に載っているだけあって、悪意を感じる記事だなぁと思ってしまいました。
この記事、弁理士が見たら怒るか呆れるのではないかと思います。

ツッコミどころは満載でどこからツッコんで良いのか悩みましたが、特に気になる点にちょっとツッコミたいと思います。

 

 特許に詳しい関係者が「中国のCNIPAは3月29日付でアビガンに関する『用途特許』を認めました」と明かす。(記事より)

「特許に詳しい関係者」って誰やねん!!名前出せや!

 

詳しくお伝えする前に、そもそもアビガンとはどんな薬か、用途特許とは何かという2点について説明させていただく。

その前に、そもそもデイリー新潮とはどのようなメディアなのか説明していただきたい。

 

全部読んでしまったけれど、PCT制度についての教科書的な説明を偉そうに書いているだけで、「特許に詳しい関係者」の名前も取材した記者の名前も出てこないし、怪しさプンプン。
この「特許に詳しい関係者」って、「自称特許に詳しい人」であって、弁理士のような専門家じゃないでしょう。

そういえば、以前も書きましたが知人弁理士のところに大衆メディアから取材が来ました。商標の先取り出願に関しての質問だったので、「先取り出願をしている本人に取材してみては?」と知人弁理士が記者に伝えたところ、実際に取材に行って記事になっていました。
おもしろ記事だったのでそちらは純粋に楽しめました。
でも、今回の記事は中国憎悪を増幅するので良くないですね。

散々こき下ろしてしまったけれど、この記事から学べることもあります。それは、
「自信を持った言い回しや有名な媒体という、内容には関係ない表面的なことに惑わされると、こういう記事を信じ込んでしまう」ということです。

特許だけに限らず何でもそうだと思います。
なんとなく有名企業だから安心できるとか(個人じゃなくて法人だから安心とか)ブランド品は安心と思いがちですよね。

でもそういう表面的には信頼できそうだけど信憑性の薄いことに信頼感を置いてしまうと簡単に騙されてしまうのではないかと思います。

医療系の記事に関してはグーグルが厳しい扱いを始めたので専門機関の記事が上位に表示されるようになりましたが、医療系以外はザルなので、こんな記事が平然と載ってしまいます。(15年以上前は、大手新聞でも間違った記事はよく載っていました。でも最近は大手新聞の記者はしっかりと勉強しているので変な記事は書きません)

雑誌は読まれてなんぼですし仮想敵を作って叩くという手法は楽に注目を集められるので好ましいのでしょうけど、日本人の中国人憎悪を青あるような記事はいただけません。

得するのはアクセスを集めたメディアだけであって、国家間の対立を煽るというとんでもない大罪を犯しているんじゃないですかね。

なお、用途特許(用途発明)に関しては以前書いた記事があるので参考として載せておきます。用途発明