多忙により、知財の知識・改で配布している弁理士試験論文式オリジナル問題の作成を2018年10月をもって中止することにしました。
一問作るのに膨大な時間がかかるため、手が回らなくなってしまいました(^^;

というわけで、過去に作った問題を放出していきます。

知財の知識・改ではオリジナル事例問題を入手できますよー。

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・・・とその前に、事例問題を解くには基本が出来ていないといけないので、まずは、基本問題をどうぞ。

(解答例はスクロールして下の方です)

とりあえず、苦手な人が多い、訂正関係から。

 

訂正についての基本問題

(1)訂正の範囲を定めている趣旨を述べよ。
(2)126条1項但書に規定する訂正の目的及び訂正の内容(時期と手続きに関するものは含まない)について詳しく説明せよ。

 

 

 

 

 

 

解答例
(1)について
訂正の範囲を定めている趣旨は、訂正した結果、明細書、特許請求の範囲又は図面の記載自体、その記載から帰結される特許権の効力の範囲、訂正前後の発明の内容・思想の同一性などについて変動が生じたときに、特許権者以外の当業者、その他不特定多数の一般第三者に諸々の影響を及ぼす弊害を防止することにある。願書に添付された明細書、特許請求の範囲又は図面の表示を信頼する第三者との利益からみて、訂正の範囲を必要最小限の範囲で認めれば足りるからである。

(2)について
1.訂正の目的(特許法126条1項但書)
訂正審判の訂正は、次に掲げる事項を目的とするものに限られる(126条1項)。
(1) 特許請求の範囲の減縮(126条1項但書第1号)
「特許請求の範囲の減縮」とは、特許請求の範囲の記載がそのままでは公知技術を包含する瑕疵があるとして特許無効又は特許取消の理由がある等と解される恐れがあるときに、請求項の記載事項を限定すること等により、特許請求の範囲を減縮することをいう。請求項の削除もこれに該当する。
特許請求の範囲は、特許出願人が特許を受けようとする発明を特定するために必要と認める事項の全てを記載した請求項の集合したものであることから、「特許請求の範囲の減縮」についての判断は、基本的には、各請求項について行うものとされている。
「特許請求の範囲の減縮」に該当する具体例として、
ア択一的記載の要素の削除
イ構成要件の直列的付加
ウ上位概念から下位概念への変更
エ請求項の削除
オ多数項を引用している請求項の引用請求項数を減少
があげられる。
(2) 誤記又は誤訳の訂正(126条1項但書第2号)
「誤記の訂正」とは、本来その意であることが、明細書、特許請求の範囲又は図面の記載などから明かな内容の字句、語句に正すことをいい、訂正前の記載が当然に訂正後の記載と同一の意味を表示するものと客観的に認められるものをいう。
「誤訳の訂正」とは、翻訳により外国語書面における意と異なるものとなった記載(誤訳)を、外国語書面の意を表す記載に訂正することをいう。誤訳の訂正が認められるためには、特許がされた明細書、特許請求の範囲又は図面中の記載の意味が外国語書面の記載の意味と異なることが必要である。
(3) 明瞭でない記載の釈明(126条1項但書第3号)
「明瞭でない記載の釈明」とは、特許がされた明細書、特許請求の範囲又は図面中のそれ自体意味の不明瞭な記載、又は、特許がされた明細書、特許請求の範囲又は図面中の他の記載との関係で不合理を生じているために不明瞭となっている記載等、明細書、特許請求の範囲又は図面に生じている記載上の不備を訂正し、その本来の意を明らかにすることをいう。
(4) 請求項間の引用関係の解消(他の請求項の記載を引用する請求項の記載を当該他の請求項の記載を引用しないものとすること)(126条1項但書第4号)
「請求項間の引用関係の解消(他の請求項の記載を引用する請求項の記載を当該他の請求項の記載を引用しないものとすること)」とは、特許請求の範囲の訂正について、訂正対象とされている複数の請求項のうち、ある請求項の記載を他の請求項が引用するような引用関係がある請求項の記載を、その内容を変更することなく、当該請求項の記載を引用しない形へと書き替えることをいう。
この請求項間の引用関係を解消する訂正が認められるためには、訂正前後において、請求項の中に含まれる発明ごとに1対1の対応関係を有すること、訂正前後の内容が実質的に同一であって、何ら変更が生じていないことが必要である。
なお、この訂正は、ある請求項が「一群の請求項」として扱われないようにするために、請求項間の引用関係を解消することを目的としてされるものである。

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2.訂正の内容
(1)新規事項を追加する訂正の禁止(126条5項)
訂正をするときは、特許がされた明細書、特許請求の範囲又は図面に記載した範囲内においてしなければならず、新規事項を追加するような訂正は認められない。
訂正における新規事項を追加しているかの判断の基準となる明細書等は、設定登録された時点の明細書、特許請求の範囲又は図面(既に他の訂正審判や無効審判の訂正の請求による訂正が確定しているときは、確定した明細書、特許請求の範囲又は図面)であるので、例えば、出願時の明細書から記載の一部を削除した明細書で特許されているときは、その削除部分を復活させる訂正をすることはできない。
ただし、誤記又は誤訳を目的とする訂正のときは、設定登録された明細書、特許請求の範囲又は図面ではなく、願書に最初に添付した明細書、特許請求の範囲又は図面(外国語書面出願に係る特許にあっては外国語書面)に記載した事項の範囲内においてすることができる。
(2)実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものでないこと(126条6項)
「実質上特許請求の範囲を拡張する」とは、特許請求の範囲の記載自体を訂正することによって特許請求の範囲を拡張するもの(例えば、請求項に記載した事項をより広い意味を表す表現に入れ替える訂正)のほか、特許請求の範囲については何ら訂正することなく、ただ発明の詳細な説明又は図面の記載を訂正することによって特許請求の範囲を拡張するようなものをいう。
「実質上特許請求の範囲を変更する」とは、特許請求の範囲の記載自体を訂正することによって特許請求の範囲を変更するもの(例えば、請求項に記載した事項を別の意味を表す表現に入れ替えることによって特許請求の範囲をずらす訂正)や、発明の対象を変更する訂正のほか、特許請求の範囲については何ら訂正することなく、ただ発明の詳細な説明又は図面の記載を訂正することによって特許請求の範囲を変更するようなものをいう。
実質上特許請求の範囲を拡張又は変更する訂正の例として
ア請求項に記載された発明を特定するための事項において、直列的要素を一部削除するもの
イ請求項に記載された発明を特定するための事項において、択一的記載の要素を追加するもの
ウ請求項に記載された発明を特定するための事項の上位概念への変更
エ請求項に記載された発明を特定するための事項の入れ替え
オ請求項に記載された数値限定が広がるか又はずれるもの
カ請求項に係る発明のカテゴリーや対象の変更
キ発明の詳細な説明中の記載の訂正が、請求項に記載された事項の解釈に影響を与え、その結果、実質上、上記ア~カのいずれかに該当するに至ったもの。
があげられる。
(3) 特許出願の際独立して特許を受けることができるもの(126条7項)
いわゆる独立特許要件である。
特許請求の範囲の減縮( 126条1項但書1号)及び誤記又は誤訳の訂正(126条1項但書2号)を目的とする訂正がされたときは、訂正後における特許請求の範囲に記載されている事項により特定される発明が特許出願の際独立して特許を受けることができるものでなければならない。ただし、この要件は、請求項の削除による訂正、訂正が求められていない請求項、明瞭でない記載の釈明又は請求項間の引用関係の解消を目的とする訂正のみがされた請求項に対しては課されない。
なお、訂正後における特許請求の範囲に記載されている事項により特定される発明が、49条の規定により特許を受けることができないときは、原則として、その訂正は、126条7項の規定に違反するが、36条6項4号及び37条の規定については、これらの規定が無効理由とされていない(123条)ことを比較考量して、126条7項に規定する「特許出願の際独立して特許を受けることができるもの」に違反しないものと考え、適用されない。

 

 

解説

ここまで完璧にかける必要はありませんが、知っておくべき内容です。本試験ではこのように問われず、事例の中で聞かれるので、具体例を覚えておくとよいでしょう。

 

[おまけ問題]
以下の訂正は「特許請求の範囲の減縮」に該当するか否か。

①特許請求の範囲の記載「A機構を有する請求項1又は請求項2に記載のエアコン装置」を「A機構を有する請求項1から請求項3のいずれか1項に記載のエアコン装置」とする訂正。

②特許請求の範囲の一つの請求項の記載「A機構を有する請求項1から請求項3のいずれか1項に記載のエアコン装置」を「A機構を有する請求項1記載のエアコン装置」と「A機構を有する請求項2記載のエアコン装置」の二つの請求項に変更する訂正。

 

 

 

 

おまけ問題の答え

①該当しない。逆に、多数項を引用している請求項の引用請求項数を減少させる訂正なら該当する。
②該当する。n項引用している1の請求項をn―1以下の請求項に変更しているので。

ちなみに気楽に読めるので知財の知識・改の記事もご覧くださいというか、必ず読んでください。短答にも役立ちます。