味の知的財産権と翻訳の重要性

「食品の味は商標保護の対象とならず」というロイターニュースの記事を見ました。

 

記事によると、オランダのチーズメーカーLevola Hengelo社が自社製クリームチーズの味の商標権が競合のSmilde社に侵害されたとして訴訟を起こしていました。しかし、欧州連合(EU)の最高裁に当たる欧州司法裁判所(ECJ)は、食品の味は商標保護の対象となる条件を満たさないとの判断を下したそうです。

 

注目してほしいのは上の文章で私が下線を引いたところです。

味の商標権」!!!

 

何それ!?

 

味の商標権を侵害されたとして裁判所に訴える・・・

 

意味がわかりません。

 

そこで、ロイターニュースの原文を見てみました。

 

 

すると、ある事実を発見しました。

 

翻訳ミスやん!!!

 

英語の原文にはcopyrightとあります。
これはほぼ日本語化していますね。
著作権という意味です。

 

しかし、ロイターニュースの翻訳では「商標」と訳されています。

著作権と商標権は違うものです。

 

元記事では、原告は、チーズの味の著作権を侵害されたとしてライバル社を訴えています。

 

しかし、日本語訳の記事では、商標権を侵害されたとして訴えたことになっています。

 

 

普通に直訳して、「チーズの味の著作権を侵害された」という訴えならば、「何それ〜ハハハ」と笑って済ませられる記事でした。

 

しかし、「味の商標権」という言葉が出てきたので、大きな違和感を(私に)抱かせることになりました。

 

 

ECJは「特定の食品製品の味が著作権保護の対象となるのに適さない」と判断し、「文学や絵画、映画、音楽作品と異なり、食品の味を正確さと客観性を持って特定することはできないうえ、味は製品の味見をする個人の年齢、好み、環境、そして食品が食べられる状況に左右されると」しています。

 

とても面白い記事なのですが、最重要キーワードが誤翻訳されているために、モヤモヤして原文を確認してしまいました。

機械翻訳ならこんな翻訳ミスはしないでしょうから、機械翻訳じゃなくて人が翻訳をしているようですね。

 

ちなみに、翻訳というものは特許出願においても非常に重要です。翻訳の良し悪しにより権利範囲が変わることも起こり得る責任感を求められる仕事です。

 

10年以上前は大手の新聞でも知財関係の記事に誤りがあるということはよくあったのですが最近は減ってきました。日経新聞なんてすごくしっかりしていて信頼できます。

 

今回のロイターニュースの記事は、ネタに近いものがあるので大きな問題とはならないでしょうが、あらためて翻訳の重要性について考えさせられました。