Wayback machineの証拠としての力【意匠権無効審決訴訟を例に】

知的財産について学び始めた人が最初に出会う条文といえば、特許法第29条だと思います。

特許法第29条第1項第3号においては、「特許出願前に日本国内又は外国において、頒布された刊行物に記載された発明又は電気通信回線を通じて公衆に利用可能となつた発明」については特許を受けることが出来ないと規定されています。

この「電気通信回線を通じて公衆に利用可能となつた発明」についてはウェブサイトに記載された発明等が該当します。

ここで、特許協力条約(PCT)における国際調査及び国際予備審査のガイドライン(165,168p)には、ウェブサイトに掲載された公開情報の公開日を知るための技術的手段として「Wayback Machine」が、日付の認定手段として挙げられています。

もちろん、先行技術の公開基準時を知るために「考慮してもよい」と規定されているだけであり、これを参酌するかは裁量的なものにすぎません。

しかし、事後的に情報を書き換えることが出来てしまう現状においては、Wayback Machineに記載されている情報は有効なものでしょう。

 

さて、ここでWayback Machineに記載された情報を元に無効審決が覆った最近の例を挙げましょう。

・・・と、その前に念のために意匠法の該当条文を挙げておきますね。

意匠登録の要件
第三条 工業上利用することができる意匠の創作をした者は、次に掲げる意匠を除き、その意匠について意匠登録を受けることができる。
一 意匠登録出願前に日本国内又は外国において公然知られた意匠
二 意匠登録出願前に日本国内又は外国において、頒布された刊行物に記載された意匠又は電気通信回線を通じて公衆に利用可能となつた意匠

 

審判番号 無効2018-880004
発行国 日本国特許庁(JP)
公報種別 意匠審決公報
発行日 2019-06-28
種別 無効の審決
審判請求日 2018-04-18
確定日 2019-05-07
意匠に係る物品 そうめん流し器

 

事案を簡単に説明すると、甲さんが乙さんの登録意匠は無効であると主張しました(意匠法3条1項2号、48条1項1号)。
そして、証拠として、Rakutenのレビューページに載っている商品画像を添付して提出しました。

ところが、そのページをWaybackmachineを用いて調査したところ、同ページの写真は乙の意匠登録出願後にすり替わっていたのです。

無効審判請求人が提出した2018年11月8日に取ったウェブサイトの写しは、被請求人(意匠権者)が出願した際(2014年)の意匠とは異なっているために、被請求人の登録意匠には無効理由が無いとされました。

 

事後的に不正なことをしてもバレてしまうのですね。

スカッと意匠!でした(^^)