象印マホービンが2018年5月21日に商標出願した指定商品「業務用加熱調理機械器具等」「魔法瓶等」商標「黒漆」が2019年11月1日に登録されていました。
この商標は、実は特許庁における審査で拒絶理由が通知されています(3条1項3号及び4条1項16号違反)。
しかし、商標出願人により「黒漆」は、一般に知られていない言葉である等の意見書が出され、それが認められ商標登録を受けたという経緯があります。
・・・いや、どうなんだろその理由(汗)
無事(?)商標登録が認められた「黒漆」ですが、漆業界の方たちは黙ってはいられません。
象印マホービンが黒漆という言葉を独占か!
そんな感じでプチ炎上していました。
それに対して象印マホービンの対応は早く、権利を放棄し、直ぐに鎮火させました。言い訳も一切なく、素晴らしい対応です。
現在異議申し立てがされているようですが、もう権利放棄されたとのことですので、今後は黒漆商標についてトラブルが起きることは無いでしょう。
このブログでも何年にも渡って定期的にこんな事件について採りあげていますが、一般の方の商標への意識は上がっているのだなと感じました。
同時に、必ずしも商標に関する正しい知識があるわけではないために勘違いによる炎上の虞れもあります。
そんなわけで、出願人は今までとは違った形で気を使わなければいけなくなったと思いました。
また、商標出願を代理する弁理士の立場としては、安易になんでも出願してしまうのはクライアントのためにも自分のためにも危険だなと改めて思いました。
こういった炎上を未然に防ぐためのアドバイスも我々弁理士の仕事なのだろうと思います(あくまでも私個人の現在の意見です。出願代理とプラスアルファの助言が弁理士の仕事という考え方は決して間違っているわけではありません)。
なお、最近は商標についてご質問をされてくる方のなかにはネット検索などで色々と知識を仕入れてからご相談される方もいらっしゃいます。意識の高まりを感じます。
ものによっては自社出願も可能ですので、安くあげたい方は弁理士に相談だけして自社出願というのも良いと思います。(人によっては嫌がると思うので「自社出願するつもりです」と最初から正直に言っておいた方が弁理士に対しても親切ですし余計なトラブルを生まないでしょう)
30分五千円程度の相談料だけで済ませたい。あとは自分でやるよ!という方には最適です。
最近は格安商標出願サービスもありますから、安く出願したいという方はこうしたサービスを利用されると良いでしょう。
ただし、格安サービスはしょせん格安です。
登録が難しい案件や後ろめたいことがある案件に関しては誤解を防ぐためにも信頼できる弁理士に相談したほうが絶対に良いです。
また、弁理士が一人だけでやっている一人事務所に頼むこともお勧めしません。ある程度の規模は必要です。
誰に頼んで良いのかわからないというかたはお気軽にお問い合わせ下さい。場所や費用に合わせて適切な弁理士をご紹介します。
また、海外での権利化に関しても弁理士に依頼したほうが安全です。というか、弁理士に依頼しないと無理です。
私も国内案件ならネットでの炎上危険性なども踏まえて助言を出来ますが(調査を除く)、海外出願をする場合にはそもそも海外代理人を通さないと権利取得不可能なこともあるのでなんとも出来ません。
商標に関して何か心配なことがあったら、一人で悶々と考えて悩むよりも、弁理士に相談してしまった方が確実ですし時間を浪費しなくてすみますので、お気軽にご相談ください。
「コンサル業と弁理士業は両立し得ない」というのは正にこういうことだなと感じますね。
弁理士は出願代理で利益を得るので、どうしてもヒアリングよりもさっさと出願させようというインセンティブが働いてしまいますからね。実際、相談料無料で格安を売りにしているところはヒアリング無しですぐに出願してしまうと思います。結果として、大きなトラブルの原因になってしまいますね・・・。
出願人に商標登録・ひいては自社ブランドに対する明確なポリシー・戦略があって、弁理士に戦略的な提案を期待していないのであれば格安事務所を利用してもいいと思います。
問題は「商標って正直よくわからないんだけど登録した方がいいんだよね?でもわけのわからないものに高いお金払いたくないし格安で済ませられないかなぁ?」というような考えの出願人がおそらくとても多いことです。これへの対策はあるにはあるのですがビジネスに深く関わることですのでコメントでは差し控えさせていただきます。