虚偽表示の禁止【特許庁に出願済?】

特許権の侵害をした場合に、何らかの罰を負わなくてはいけないということは一般の人々の間でも認識されていると思います。

ということは、逆に言うと「特許製品ではない物に特許表示をすると競合社は特許侵害を怖れてその製品を製造販売しないということになりますので、他社牽制効果があります。

ただし、特許製品ではないものに特許表示をすることは「虚偽表示」ですので刑事罰を受けることになります。

また、特許が切れたのに特許表示をしたままでいることも「虚偽表示」であるため、刑事罰を受けることになります。

虚偽表示の禁止
第百八十八条 何人も、次に掲げる行為をしてはならない。
一 特許に係る物以外の物又はその物の包装に特許表示又はこれと紛らわしい表示を付する行為
二 特許に係る物以外の物であつて、その物又はその物の包装に特許表示又はこれと紛らわしい表示を付したものの譲渡等又は譲渡等のための展示をする行為
三 特許に係る物以外の物の生産若しくは使用をさせるため、又は譲渡等をするため、広告にその物の発明が特許に係る旨を表示し、又はこれと紛らわしい表示をする行為
四 方法の特許発明におけるその方法以外の方法を使用させるため、又は譲渡し若しくは貸し渡すため、広告にその方法の発明が特許に係る旨を表示し、又はこれと紛らわしい表示をする行為

虚偽表示の罪
第百九十八条 第百八十八条の規定に違反した者は、三年以下の懲役又は三百万円以下の罰金に処する。

さて、この虚偽表示が禁止されている理由は、特許製品ではないのに特許製品であるかのように思わせることは消費者にも不利益を与えるためだからです。

では、虚偽表示には特許が切れた後に特許表示をしたままでいる他、どのような例があるでしょうか。
たとえば、特許製品ではない製品に「世界特許認証」なんて表示をすることは許されません。
また、登録が拒絶された番号を表記したり、出願中にもかかわらず登録と表記、それから商標登録を特許登録と表示することも許されません。

商標の他に実用新案登録を受けただけなのに「特許庁で権利取得済み」なんて表示するのも虚偽表示っぽいですよね。

では、実際は実用新案登録出願をしただけなのに、「特許庁に出願済み」と表示するのはどうでしょう?
登録とまでは書いていません。
しかし、目的が抜けていて商標出願なのか意匠なのか特許なのかさっぱりわからずなんだか怪しいですよね。

ここで、今日見つけたとある会社のとあるマスクについての広告をご紹介します。

まず、見出しに【特許庁出願済】とあります。

次に、株式会社名を聞いて、え、あの大企業?と思ってしまったかもしれません。タイガー電器ですって!
あのタイガーの関連会社?では無いのね。

 

マスクというものは誰でも使用するものですから、広告を見る人が知財関係者で無いことが大半でしょう。

特許庁という文字面を見ただけでなんか凄い製品なのかもしれないと勘違いしてしまう可能性が高いです。

そうしたことを考慮すると、この「特許庁に出願済み」という表示はアウトなのじゃないかなと思いました。

なお、虚偽表示や模倣品対策に関しては韓国特許庁が力を入れていて、毎年こうした生活必需品への虚偽表示を多数摘発しています。
コロナで市場が混乱気味であることを考えると、3枚で1980円もするこの高額なマスクの広告は、好ましくありません。