有名商標を一部に含む商標権は無効理由を有するか【JAVA事件】

題名の通り、有名商標を一部に含む商標権は無効理由を有するかについてお話したいと思います。

何でこんなことをとりあげたかと言うと、こんなニュースを見たからです。

オラクル社より弊社商標「Javasparrow」の商標登録に対する無効審判請求を前提とした商標権一部放棄の検討要求を受けました
Javasparrow株式会社(読み:ジャバスパロウ、本社:東京都千代田区、代表取締役:國舛等志・稲田祐介、以下「当社」)は、米国Oracle America Inc.(以下「オラクル社」より、弊社商標「Javasparrow」の商標登録に対する無効審判請求を前提とした商標権一部放棄の検討要求を受けましたので、下記の通りお知らせいたします。
社名の由来について
弊社の社名である「Javasparrow」は、鳥綱スズメ目カエデチョウ科キンパラ属に分類される鳥類である文鳥の英名です。
代表取締役が文鳥好きで、文鳥のように人々に愛されるような存在でありたい、また鳥瞰の目をもって物事を大きくとらえ全体を見渡したもの作りをしたい、という想いから社名をJavasparrow株式会社にしました。
2017年10月には、社名である「Javasparrow」および弊社の第1号製品である「wesign」について商標登録を出願、翌2018年8月に商標登録を受けています。
2018年10月4日、オラクル社から弊社に対し、弊社名の登録商標に「JAVA」が含まれることから「Javasparrowとオラクルとの間で業務上関連があるような誤解を招く恐れがある」との理由により、弊社商標権の一部についての権利放棄可否を問う連絡を受けました。

これを受けて弊社としては同月24日、弊社名の商標は特許庁の審査を経て登録されたものであり、Javasparrow株式会社とオラクル社は何らかの業務上の関連があるかのような誤認・混同を与えるものではないとの旨を回答いたしました。

同年11月2日、オラクル社から特許庁へ対して、弊社名の商標登録に対して異議申立がされましたが、翌2019年5月23日には特許庁より「JAVAがパソコン等の機器の外部に表示されているわけではないので、一般需要者に広く認識されているとは言いがたい」「Javasparrowは不可分一体の商標なのでJAVAとは類似しない」との理由により、商標登録は取り消しとならない「維持決定」との判断が下りました。

特許庁では5月の時点でオラクル社の異議申し立てを認めず維持決定がされています。

ところが、8月になってオラクル社から、「Javasparrowの商標登録について無効審判の請求を検討している。請求の前に合意による解決のためにJavasparrowの商標権の一部を放棄して欲しい」との連絡が来たというのです。

しかも回答期限は8月30日。短っ!

ちなみに、オラクル社が商標権の一部放棄の検討を要求する指定商品・役務の範囲はこちらです。

第9類:
スマートフォン、タブレット型コンピュータ、アプリケーションソフトウェア、
電子計算機用プログラム、携帯電話機

第42類:
アプリケーションソフトウェアの提供、電子計算機用プログラムの提供、
電子計算機のプログラムの設計又は作成

 

さあ、上記事実を認定してあなたはどのように感じたでしょうか。なんとなく「オラクル悪いやっちゃな!」というイメージを受けたのではないでしょうか。
こういう事件の場合には警告者側ってそんなに悪くないことが多いのですが(一般の人が感情的になって判断することの方が間違っていて、法律上は問題ないことが多いから)、今回は「うーん、オラクル社、気持ちはわかるけどやり方が悪かったな」という印象を持ちました。

私個人の意見といたしましては「Javasparrow社は別に問題ないよ!商標権放棄しなくていいよ!」とお伝えしたいと思います。

もちろんオラクル社の気持ちはすごく分かります。著名商標を一部に含む商標権を同一指定商品・役務で取られてしまうとビジネス上痛いんですよ。だから、警告をするのは当然だと思います。

ただ、今回警告を受けた側の会社は、不正の意図が全然無いわけですね。

このJavasparrow社に何か落ち度があったとしたら、「Java」を含む会社名にするのは最初から避けるべきだったということですね。

Javasparrowは一つの意味ある単語で一連一体不可分と捉えられますが、Javasparrow社がもし悪意を持ってJavaの部分だけに色を塗ったり文字を大きくして表示すると消費者に勘違いをさせてしまいます。
すると、Javaの商標権者としては困ってしまうわけです。

こんな感じね。

Javasparrow

Javasparrow

そんなわけで、JAVAという著名商標権が存在することは知っていて当然であり、少しでも勘違いされることを防ぐために、この名前で取るのは避けた方が良かったんじゃないかなぁと思います。

まあ、今更ですが。

Javasparrow社は商標権を誠実に使っていけば何の問題もありませんし、オラクル社もそこまで責められるのは可哀想かなという印象です。

 

なお、こうした警告を受けた場合に真っ先にすべきことは弁理士(または商標に詳しい弁護士)に相談することです。

(弁護士じゃないです。弁理士です。覚えて下さい。よろしくっ!!)

お近くの信頼できる特許事務所や法律事務所をご紹介いたしますのでお問い合わせください。

 

「福田、お前は対応してくれないのか。」

ええ、すみません。私はやりません。私は弁理士を育成し、弁理士さんを応援するだけの人間ですから。

代わりに、弁理士の名に恥じないようしっかりとした仕事をする人しか紹介しません。

紹介する私の名誉にも関わりますから。

 

なお、2日前に出席してきた知財勉強会で弁理士の一人が「妻が交通事故に遭ったのでインターネットで検索して出てきた保険屋に依頼したら対応が最悪だった」と愚痴っていらっしゃったのでネット検索よりは信頼できる人の紹介が良いでしょう。

インターネットで検索して最初に出てきた弁理士の事務所(特許事務所と言います)は格安特許事務所であることが多いので多少高くても信頼できる特許事務所に依頼すべきです。

インターネット経由で依頼してそもそも専門家のアドバイスが間違っていたという事例は複数報告を受けておりますのでちょっと危険です。

 

今日お邪魔してきた法律事務所さんなんて古くからある事務所さんなので信頼出来ます。

福田が今日お邪魔してきた法律事務所
福田が今日お邪魔してきた法律事務所

・・・って、特許事務所じゃないわっ!

まあ、今回のケースでは法律事務所の方が良いかもしれませんね。

「結局どこにすればエエねん?」

事案によりますが、警告を受けた場合は弁護士の方が良いかもしれませんね。

 

まあ、基本としては商標についてトラブルに巻き込まれたら弁理士に助言を求めるということを覚えておいてください。個人や中小企業の場合は顧問弁理士や顧問弁護士はいないでしょうからそんな場合はインターネット検索をして出てきたテキトーな事務所に依頼するよりは友人知人の紹介が良いでしょうね。

私もご質問を受けたらご紹介いたします。
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