現実のジョブ・転職とゲーム内のジョブ・転職

先週『ゼルダの伝説 ティアーズオブザキングダム』が発売され、子どもたちが楽しげにハイラル世界を徘徊しています。私はゆっくり見ていないのですが、ニセゼルダ?が出てくるところまで進めたようです。月曜になり「学校休みたい」と言いつつもちゃんと学校に行ってくれました。これが社会人だと、「まじ会社行きたくない」となるのでしょう。そして、挙句の果てには悩みすぎて「転職したい。ハイラルへ引っ越したい」となるのでしょう。

現実世界では「仕事、転職」というと固いイメージがつきまといますが、ゲーム内で仕事や転職というとワクワクしかしませんからね。
こんな世知辛い世の中、ゲームの世界に逃避するのもあながち間違っていないと思います。というか私はゲームをやり続けて食事と睡眠が足りなくなっていつの間にか死んでいたいです。人にエンターテイメントを提供するのではなく、提供されたエンターテイメントにどっぷり使るのが贅沢な生き方だと思っていますから。

ゲームなんて創作にしか過ぎないのですが、そこでは他の創作(小説、曲、アニメetc…)にはできない方法で神がかり的な創作者の意図が垣間見えることがあります。それは、プレイヤーの妄想で補われます。(プレイヤーの妄想を掻き立ててくれるという点ではロマサガが秀逸です。セリフが説明臭くないのが良いのです。悪く言うと言葉足らずですが説明が多すぎるのはゲームにおいては害です)

「創作者の意図を超えた独り歩き」に関して語るならば、メガテンであるべきだと思いますが、転職システムのあるゲームについて語りたいので、神ゲーと呼ばれるタクティクスオウガの前身である『伝説のオウガバトル』について独り言を書き置きます。
(なお、タクティクスオウガのフェアリーはオウガバトルのフェアリーとは違い、ファイアーエムブレムの踊り子みたいな能力を持っているので、「タクティクス(戦略)!」と感動したものです。高い攻撃力を持ったキャラクターよりも戦略を活かせるスキルを持っているキャラクターのほうがゲームが面白くなりますから)

伝説のオウガバトルは既存ゲーム(当時)のリアリティの無いところに目をつけて(?)、”普通のRPGやシミュレーションゲーム”をプレイしてきた人は苦戦を強いられるシステムを用いています。”既存のゲームのリアリティの無いところ”とは、たとえば、「弱いボスから順番に出てきてくれるのでゆっくりとレベル上げをできる」「王様が勇者に魔王やドラゴン退治を命ずる割にはしょぼい装備しかくれない」「勇者がモンスターを虐殺しまくっても聖人君主として崇められる」点などです(漫画『ロトの紋章』シリーズではゲームの不自然なところが解消されています)。
異世界転生ものの漫画ではネタにされるような点と言っても良いかもしれません。

なので、オウガバトルではレベル上げよりはステージクリアを急ぎますし、序盤から最強武器を手に入れようと思えば手に入ります。そして、敵を殺しまくると民衆からの支持が下がります。民衆からの支持を下げないためには敵のレベルよりこちらのレベルが下であることが必要とされているので、常に戦闘は楽になりません。

ただし、これは建前上のことです。
王道のプレイをすると、すごく楽しいのですが難しいです。
なので2つほど悪いことをすることが暗黙のうちに推奨されています。

1つ目は、「序盤に活躍してくれた仲間(固有キャラではなくモブ)でもうまくクラスチェンジ(転職)できなかった場合、首を斬って他の新人を育てる」(例:①とりあえずヴァルキリーにはなったけどカリスマが下がってフレイアにクラスチェンジできないから捨てよう②ランスロットのアライメントが下がってパラディンになれないけど、こいつがいないと真のエンディングを見れないから残しておこう)

この1つ目だけでもキッツイですね。外資系の会社みたいですね。ストーリーの中でうまく育てるのは難しいので、大抵はクリア後の面に戻ってレベル(アライメント)上げしちゃいます。

2つ目は、雑魚敵を全滅させるためだけの死神ユニットを作る。
クラスチェンジを済ませたら、カリスマとアライメントは気にせず、ガンガン惨殺しまくります。
草の根も生えなくなったらようやくステージクリアです。
なのに、主人公個人のカリスマとアライメントは高いままなので民衆からの支持は高い!

・・・現実世界もこんな感じですよね。
輝かしい起業家や経営者が全てキレイなわけなく、見えないところで部下に汚い仕事を命じています。何かあったら秘書のせいにすれば良いし(偏見)。

こうした現実社会の汚さ、理不尽さを教えてくれる稀有なゲームが伝説のオウガバトルです(?)。
あと、男性キャラは年をとるとイケメンもハゲるということを教えてくれました。

大空・低空ユニットが強力過ぎてドラゴン等他の種族が活躍する余地がないという欠点は抱えていますが、そこは「飛行ユニット禁止」を自分に課せば良いだけです。FFⅤでエルメスの靴を禁止するようなものです。
真の意味で楽しみたかったら、死神部隊を作らないという縛りをかけるのが良いと思います。
虐殺部隊がいると簡単過ぎてゲームバランスが崩壊するからです。(ところで私は初代ゼルダの伝説を、最初に出会えるおじいさんから剣を受け取らずに剣無しで進めたことがあります。これも縛りですね。)

私は「悪魔以外の全キャラを仲間&ワールドクリア以外の制限は設けずにひたすらお金を貯める」ことを目標にしてみたことがあります。
このゲーム、普通のゲームに比べて持てるお金の上限が多いので、最高額まで貯めるのは大変です。まあ、カオスフレームを高い状態にしてから数日放置でがっぽり稼げるんですけどね。レベル上げを禁止していなかったため余裕でした。

ただし、ほんとうの意味でゲームの良さを楽しむためには、やっぱり縛りはあったほうが良いです(忠誠心ゲージがあればよかった)。

LUCKの一番高いデネブ(またはウォーレンと一緒に加入する魔女からの転職キャラ。お勧めはプリースト)をユニットリーダーにして拠点解放 & 拠点防護ユニットにするとビジュアル的にも良くて楽しめると思います。
とにかく戦う回数とレベルを限定しないと強くなりすぎてつまらなくなりますから注意です。
一度クリアしたステージには必須アイテムを取りに行くとき以外は戻らないという縛りをかけると、レベル(アライメント)上げもできないので一番良い縛りだと思います。

マルチエンディングシステムをとっていて、(最高のエンディングではありませんが)主人公が政権をとるエンドもあります。「聖剣ブリュンヒルド」ではなく、政権を握るわけです。
ある意味こちらが道なのかもしれません。辺境の地から突如現れた主人公が王国のトップになるのですから。
クエスト社(伝説のオウガバトルを創った会社。無名だったが一躍有名に。後にスクエニに買収される…)とも重なります。
ワールドエンディングを考えると、クエストのクリエイターたちは皆新たな活躍の場を求めて去っていくとしか思えません。

このように、伝説のオウガバトルはやりこみ要素が強い面白いゲームであるだけでなく、現実社会と似た面もあっていろいろ考えさせてくれます。

・・・というわけでゲームと現実世界の仕事を結びつけて語りましたが、書いた後になって、転職といえばウィザードリィだよなあと思い直しました。まあいいや。