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テクサ株式会社に所属するタレントの野田草履氏がカルピスの商標権を侵害したとして話題になっています。
具体的内容は、というと、2018年8月28日に開催された「うず祭り」において野田草履氏が販売したTシャツに、カルピスの登録商標が付されていたのです。

カルピスの商標は、みなさんご存知のこれです。(他にもありますが)

カルピス商標 JPlatpatより
カルピス商標 JPlatpatより

カルピスはロゴとして、カルピスの下に、大きく「力」と載せ、キャッチフレーズ的に、「それは”発酵”が生み出すチカラ。」と記載しています。

 

野田草履氏がTシャツに付したのは、「カルピス」及び「力」の部分は全く同じで、キャッチフレーズの所が、「それは”野田”が生み出すチカラ。」と変更されています。

 

これを見たユーチューバー(?)が、アサヒ飲料に電話し、その会話の様子をユーチューブにアップしています。

アサヒ飲料さんも大変ですね・・・。

 

さて、今回の件は商標法的にどうなるのでしょうか。

 

実は、商標権侵害というものは、登録商標の知名度や使用態様等により裁判所での判断も異なってくるのでこういうことをしたらこう、と簡単に言い切れるものではありません。

したがって、「なんとなく悪そうな行為」や「大丈夫そうな行為」だからといって過度に心配したり安心したりすることはできないのです。

この点を踏まえて今回の件に関してご説明したいと思います。
(なお、今回の記事は一般向けですので、専門用語はあまり使いません)

 

まず、結論から言うと、野田草履氏の行為は商標権の侵害になります(商標法67条第1号)。

めちゃくちゃ有名な「カルピス」をそのまんま使ってしまっていますからね。

 

「”発酵”を”野田”に変えたのがいけない」とかそんな議論になる以前に、簡単に商標権の侵害が認定される事例です。

 

じゃあ、商標とかキャッチフレーズをパロディしたら全部だめなのかというとそういうわけでもないのです。

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たとえば、「カルピス」がそれほど有名でなかったら、パロディをしても商標権の侵害にならなかった可能性は十分にあります。

有名でなかったら防護標章登録を受けることもできず、簡単に商標権侵害だなんて言えませんから。

 

しかし、そもそも有名でない商標をパロディしたところで全然面白くありませんよね。

カルピスという誰もが知っている有名商標をパロディしたから面白いのであって、無名商標をパロディしたところで、面白さは生まれません。

 

また、カルピスが有名でなかったら、清涼飲料水やその原液に「カルピス」と付さない限り商標権の侵害は起こりません。

Tシャツに「カルピス」と付しても「美味しそう」と思う人なんていませんからね。

 

しかし、カルピス(カルピスだけでなく有名な商標、たとえばSONYだとかGOOGLEだとかも)はそれ自体が商品やサービスの枠を超えて有名になってしまっています。

 

ですから、これだけ有名な商標を使用するということには大きな責任が伴うのです。

 

このように、商標権というものは、その登録商標の知名度により力が変わってきてしまいます。

それは、”知名度”が生み出す力。なのです。

 

カルピスのようなビッグブランドは、ありとあらゆる商品やサービスにおいて便乗やパロディを防ぐための手段を採っています。

「戦車」や「たばこ」、「人工受精用精液」でさえ権利を取得しているので、話題になることを狙って、安易に登録商標を使用すると、権利者から損害賠償請求をされることもあるので、お気をつけください。

 

なお、野田草履氏が、所属しているテクサ株式会社の主張を見ると、「野田草履氏は弊社と契約する前からこういうことをしていたから弊社の責任ではありません」と読めますが、現代ではこのような責任逃れと受け取られかねない発言はかなり危険です。

なぜなら、「所属タレント等の倫理的教育は企業の義務である」という考え方が一般に受け入れられている現状では、「炎上したら当社とは一切関係ありませんというのはずるい」と受け取られてしまうからです。

この不誠実に受け取られかねない対応は企業ブランディング的にマイナスです。

 

したがって、企業はタレントを利用して利益を上げることだけでなく、所属タレントが行き過ぎた行為をしないように見張ることもまた大事な仕事であるといえます。