悪意の商標登録出願を減らす方法【効果的な商標ゴロ対策】

近年、無関係の第三者による悪意の商標登録出願のニュースが種々のメディアで取り上げられることが増えてきました。
(ティラミスヒーロー、PPAP、などなど。英語版ですが、経済産業省が公表した事例集に事例が山のように載っています。)

悪意の商標登録出願とは

この、無関係の第三者による悪意の商標登録出願というものは昔から行われてきたことです。
勝手に商標登録出願を行って、それを高値で売りつけるという倫理的に許されない「ビジネス」です。

そして、これは日本に限ったものではなく、外国でも同じです。

たとえば、韓国ではアイドルグループの名称(「少女時代」や「東方神起」など)や有名な楽曲(「江南スタイル」など)、テレビ番組の題名(「一泊二日」など)などが無関係の人によって勝手に商標登録出願されていました。

 

ところが、韓国では、悪意の商標登録出願を大幅に減らすことに成功しました。

 

たとえば、2011年度には2087件もあった悪意の商標登録出願が、2016年度には、なんと247件に減っています。
実に、96.1%もの削減に成功しています。

参考:悪意(Bad-faith)の商標出願に関する調査研究報告書

そこで、韓国の例に習って、どうすれば悪意の商標登録出願を減らせるのかその対策を考えてみたいと思います。

悪意の商標登録出願を減らす方法

韓国特許庁の採った対策

韓国特許庁では以下の対策を採りました。

①商標の使用意思について合理的疑問がある場合は、使用計画書の提出を求める使用意思確認制度の導入(2012 年 3 月)

②指定商品を過多に指定した場合は、出願手数料を追加する出願手数料加算制の導入(2012 年 4 月)

③共同経営者、投資家、委託研究事業者などの企業における利害関係人が無断で出願し、登録を受けた商標の使用制限規定の導入(2014 年 6 月)など。

 

これらの対策により、商標の使用意思がない先取り目的の商標出願を防止できるようにしました。

 

そして悪意の商標出願人が未登録商号を先に商標登録して小規模商人に合意金を要求するような行為を防止するために、

④商標出願前に、先使用権を拡大(2013 年 10 月)することによって、先に使用していた企業の名称や商号に対して商標権の効力が及ばないようにし、

不使用商標に対する商標登録の取消審判を何人も請求することができるよう、請求人の範囲を拡大(2016 年 9 月)する等の商標法の改正を行いました。

更に、

⑥悪意の商標出願被害申告サイトを設け、被害者からの相談を受け付けて疑わしい出願人を選定し、情報共有を通してこれらの出願人からの出願を登録しないようにしました。

 

さらに、さらに、

⑦商標出願及び紛争事例を分析して悪意の商標出願を常時モニタリングし情報を維持管理するのみならず、悪意の商標出願による被害の防止のための様々な広報活動を持続的に展開しました。

 

これらの対策により、韓国特許庁は、見事に悪意の商標登録出願を激減することに成功したのです。

 

すごい!!

 

これに対し、たとえばインドだと、外国の競合企業がインドで事業を行うことを阻止する目的で大手インド企業が外国の競合他社の商標及びその変形版を登録するために複数の出願を行ったりすることがあります。

でも、このような出願を防止する対策が採られていません・・・。

ただし、被侵害者が異議申立て及び取消請求を行い、その結果として悪意の出願又は登録を取り消すということはできます。

でも、韓国特許庁のように最初から登録されないようにするほうがスマートですね。

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日本でできる悪意の商標登録出願対策

では、韓国に習って悪意の商標登録出願を減らすために日本ができることを考えてみたいと思います。

 

まずは、①商標の使用意思についてです。

一応日本国商標法では3条1項で使用意思を求めてはいますが、これは形式的なものです。

 

そこで、使用意思に合理的疑問がある場合は、使用計画書の提出を求める使用意思確認制度を日本でも導入すると良いと思われます。

(ちなみに、韓国では特許庁職員と特許審判院職員は相続又は遺贈の場合を除いては在職中に商標の登録を受けることができません。出願される商標についてその「穴」に気づきやすい立場にいることから、職員による商標登録は不可能にするということは良いと思います。)

 

また、悪意の商標登録出願をしてくる人は、指定商品を無駄に多く指定してくることが多いので、指定商品を過多に指定した場合は、②出願手数料を追加する出願手数料加算制の導入も効果的だと思われます。

 

さらに、③利害関係人が無断で出願し、登録を受けた商標使用制限規定の導入も必要でしょう。

こういうの多いですからね・・・。「いや、悪意は無い。権利を守るために商標登録しておいてあげただけだ」という言い訳をしそうですが・・・(BL社さんなんて、「ビジネスだ」と言い切っていますし)。

「代わりに商標出願しておいてあげる」と言っても、外形的に「悪意」に見られてしまう場合は怪しまれてしまうことがあるので、そのようなことを防ぐためにも、「無断で勝手に商標出願をしておいてあげる」ことは慎むべきでしょう。

 

もしこういうことをするのなら、事前に「商標出願はしますが、悪い人が商標を独占することを防ぐためですよ」ということを公表しておいたほうが炎上を防げると思います。

「そだねー」を商標出願した六花堂さんはちょっとした炎上状態になっていましたからね・・・。

あと、「子ども食堂」について商標出願した牧野弁護士も。

 

さて次は④先使用権の拡大です。

先に使用していた企業の名称や商号に対して商標権の効力が及ばないようにすることも重要です。

日本国商標法32条は「周知性」を要件としているので、周知でない限り事業継続を断念しなければいけない状態に陥ることもあるので、この要件を緩和してほしいと思います。

といってもあまりにも緩和しすぎてしまうと「有名じゃないけど商売していたもんね」と主張する人が現れるでしょうから、商号や企業の名称として本当に使っていた人に限定すべきでしょう。

 

不使用商標に対する商標登録の取消審判を何人も請求することができる点については日本では既に行われているので改正不要です。

 

⑥悪意の商標出願被害申告サイトを設けることも良さそうですね。

⑦についても、もっと広報に予算を割いても良いのかもしれません。

 

以上7点について見てきましたが、要約すると、韓国の採った対策の大部分を日本でも導入すれば良いと思います。

こういうパクリは良いパクリ(笑)

 

なお、改訂商標審査基準第14版では、 商標法第4条第1項第7号において、悪意の商標登録出願について、「当該商標の出願の経緯に社会的相当性を欠くものがある等、登録を認めることが商標法の予定する秩序に反するものとして到底容認し得ない場合」に該当するものとして、新たな基準が追加されました。

悪意の商標出願であるかどうかは、情報の提供等により判断できます。

 

もし、自社の商標が無関係の第三者によって商標出願されていることに気づいたら、早い段階で情報提供を行っておくと、商標登録を阻止できるでしょう。