*この記事は旧ブログ「問題解決中」の記事と同じです。実際に描かれたのは2年ほど前です。リンクを下さっていた方はこのブログのアドレスに設定し直してくださると助かります。
自らがお店を営んでいると、他店で売っている商品の値段には敏感になってしまうと思います。
お店を営んでいなくても、食品や消耗品の価格差に敏感で、「激安!」のポップに騙されず本当に安い値段で買う消費者もいます。はい。私、福田のことです。主婦ですからねっ!
最近は「激安」や「地域最安値」をうたいつつ、普通の値段または他店より高い値段で売っているお店が多いように感じますが・・・。
まあ、知的財産権法とは違う法律の問題になるのでそれはおいておきます。
さて、値段に厳しい消費者の注意をひくためには、比較広告というものが昔からありますが、10年ほど前に、「商品の原価を示してその値段で売る」という原価セールをしたドラッグストアがあります。
激安で有名なそのお店に行った私は、サロン限定商品だったはずのケラスターゼがワゴン販売されているのを見て驚いたことがありますが、それはおいといて(じゃあ書くな)、通常、一般消費者には示されない原価を書いちゃうのって「それいいの!?」と思ってしまいますよね(^^;
だって、ハンドクリームとか化粧品って目茶苦茶安いですもん。仕入れ値を示しちゃマズイですよね。
そのチラシを激安ドラッグストアじゃなくて普通の薬局に持って行って「お前はこんな値段で売っているのか!」と文句をつける人もいるかもしれませんし?!
・・・で、原価をばらされてしまった取引業者は怒って、「営業秘密をばらしたから不正競争防止法違反だ!」と鼻息荒く当該ドラッグストアを不正競争防止法2条1項7号違反で訴えました。
この事件を「原価セール事件」と言います。いや、ホントに。
さて、この裁判の結果はどうなったでしょうか。
弁理士受験生など法律を学んでいる人は答えを見る前に少し考えてみてください。
良いですか?
答えを言いますよ?
結論は・・・
「当該請求は認められない」
でした。
だって、不正競争防止法2条1項7号に該当するためには、
1.その情報が営業秘密に当たること
2.営業秘密の保有者からその営業秘密を示されたこと
3.不正の競業その他の不正の利益を得る目的またはその保有者に
損害を加える目的がある
という要件が必要であるところ、1.そもそも原価って全然営業秘密じゃないんですよね。
営業秘密の定義(秘密管理性・有用性・非公知性)に当てはめてみればわかるはずです。
また、2.卸価格は合意によって決まるので「示されたに過ぎない」場合は当たらない
3.を充足する理由も見当たらない
ことにより請求は認められず、原価をバラされた業者は泣き寝入りをするしかありませんでした。
法律で当然に保護されると思って安心している会社は気を付けてください。
同じようなことを防ぐためには、契約の段階でしっかりと「原価を消費者に示すことを禁ずる」というような条項を設けなくてはいけません。
消費者としては原価セールは大歓迎ですけどね(笑)