弘道館商標は無効理由を有するか

佐賀県が使用している「弘道館2」の名称について、自己の所有する「弘道館」の商標権侵害であるとして500万円の損害賠償を求めて旧藩主鍋島家子孫の女性が県を提訴したというニュースを見ました。
2017年から「弘道館2」の名称を使ってセミナーを行っている佐賀県は無効審判を請求するようです。

この無効審判請求は認められると思います。

以前、同じような事件がありました。

商標「吉田松陰」について異議申し立てがされ、それが認められた事件です。
異議申し立てが認められたのは、
(1)吉田松陰の周知・著名性
(2)吉田松陰の名称に対する国民又は地域住民の認識
(3)吉田松陰の名称の利用状況
すなわち、一般に歴史上の人物のゆかりの地においては、その地の特産品や土産物にその者の名称や肖像が表示されて観光客を対象に販売されてる。
(4)吉田松陰と出願人との関係
すなわち、本件商標の登録審決時の出願人は吉田松陰とゆかりのない人物だった。

以上の理由から商標法4条1項7号違反として『吉田松蔭』商標に対する異議申し立ては認められました。

商標法4条1項7号 公の秩序又は善良の風俗を害するおそれがある商標

 

さて、この吉田松陰事件と今回の弘道館事件の違いは「商標権者と”弘道館”の関係」の点にあるのは明らかです。

弘道館の商標権者は、旧藩主鍋島家子孫だそうですから。

 

ただし、「弘道館」って鍋島家だけのものではないですよね。江戸時代に設立された藩校の名称です。(なお、佐賀藩は水戸藩、出石藩と並び天下三弘道館と呼ばれています。)

ということは、鍋島家の子孫とはいえ、「弘道館」を独占することは出来ません。「弘道館(佐賀藩)」ならまだ良いのですが。

そんなわけで、「弘道館」商標は、「吉田松陰」事件と同じく、商標法4条1項7号違反として無効審判で無効にされてしまうだろうなと思います。一私人に独占させるべきではありませんからね。