任天堂株式会社が、株式会社マリカー(現商号:株式会社MARIモビリティ開発)に対して2017年2月24日に提起した訴訟(平成29年(ワ)第6293号)の控訴審(平成30年(ネ)第10081号)につき、知的財産高等裁判所において中間判決が下されました。
【中間判決の内容】
①「マリオカート」:日本国内の被告会社の需要者の間で任天堂株式会社の商品等表示として著名
「MARIO KART」:日本国内外の被告会社の需要者の間で任天堂株式会社の商品等表示として著名
↓
被告会社による「マリカー」、「maricar」等の表示の営業上の使用行為(外国語のみで記載されたウェブサイト等で用いることを含む)は不正競争行為に該当する。
②「マリオ」等のキャラクターの表現物が日本国内外の需要者の間で任天堂株式会社の商品等表示として著名
↓
被告会社が「マリオ」等のキャラクターのコスチュームを貸与する行為等が不正競争行為に該当する。
①については納得できる中間判決ですが、②については少し疑問があるので少し考察してみたいと思います。
①については非常に納得できます。特に書くこともないのですが、法的説明を書いておきます。
「マリオカート」「MARIO KART」は著名な商品等表示(「著名」とは簡単に言うと「有名よりももっと上」)です。
この著名な商品等表示を自己の商品等表示として使用(たとえば、ウェブサイトで表記するなど)すると、不正競争防止法2条1項2号に該当します。
不正競争防止法2条1項1号の要件を満たすためには、「混同を生じるか否か」が重要論点となってくるのですが、「著名」であると認定されたので、あっさりと2号が適用されます。
②については疑問があります。
「マリオ」等のキャラクターの表現物が日本国内外の需要者の間で任天堂株式会社の商品等表示として著名と認定されたので、旧マリカー社が「マリオ」等のキャラクターのコスチュームを貸与する行為も不正競争防止法2条1項2号に該当するようです。
ところが、不正競争防止法2条1項2号には「貸与」という言葉が出てきません。
不正競争防止法2条1項2号「自己の商品等表示として他人の著名な商品等表示と同一若しくは類似のものを使用し、又はその商品等表示を使用した商品を譲渡し、引き渡し、譲渡若しくは引渡しのために展示し、輸出し、輸入し、若しくは電気通信回線を通じて提供する行為
マリカー社の場合は、任天堂に無許可でコスプレ衣装を作ったわけではなく、正規品(ドンキホーテなどで売ってるやつ?)を購入しているようです。
著作権法の貸与権は、正規品でも有効です。
貸与権
第二十六条の三 著作者は、その著作物(映画の著作物を除く。)をその複製物(映画の著作物において複製されている著作物にあつては、当該映画の著作物の複製物を除く。)の貸与により公衆に提供する権利を専有する。
しかも、貸与の仕方もただ単にレンタル衣装屋さんのように貸与しているのではなく、マリカー本業の付随(おまけ)サービスとしてコスプレ衣装を提供しているようです。
後ろに弁理士や弁護士がいるのでしょうね。よく考えたものです(こういうずる賢さは好ましい行為ではありませんが、法のグレーゾーンをついているので賢いなと思ってしまいます。上田育弘氏についても同様)。
ただ、マリオ等のキャラクターのコスプレをしてカートに乗るからこそ楽しい体験ができるということを考慮すると、どうにかしてマリカー社の行為を違法にしたいものです(だって、普通のヘルメットをしてカートに乗っても「マリオカートをしている」という気分は味わえませんよね)。
それから、「コスプレ衣装を着た人の画像や映像を宣伝に使っている」行為についても任天堂株式会社は主張していました。
これが、不正競争防止法2条1項2号に該当するのではないかなと思っています。判決文を読んでいないので違うのかもしれませんが。
でも、これくらいしか不正競争防止法2条1項2号に該当しそうな行為って無いのですよね。
「著作権の侵害」とは言わずに不正競争防止法違反と言っているのはこういうことかなと。
真実の解明は判決文に任せるとして、マリカー事件に関連した事例を考えてみたことがあるのでご紹介してみたいと思います。
以前噂になりやすい効果的な店舗名【ベホイミ・ケアルラ・ディアラマ】というブログ記事を書きました。
この中では、「ドラクエ」「FF」というような著名な名称ではなく、「ホイミ」「ケアル」という「ゲームをやっている人には知られているけどゲームをやっていない人にはわからない」レベルの有名な魔法の名前を取り上げてみました。
「ホイミは著名だろ!」と思ったあなた、待ってください。
所詮有名ゲーム内で使われる魔法の名称に過ぎないので、裁判所で著名と判断されるかどうかはわかりません。
「ホイミ」が誰でも知っているレベルの著名性を携えているかどうかは疑問だと思います。
個人的には著名な気がしますけどね。裁判所で争ってみてほしいですね。
「ケアル」も同様です。
・・・とあんまり書くと実際にこの名称を使っているお店に迷惑なのでそろそろ黙ります。
さようなら。