太宰府天満宮の名物餅菓子「梅ケ枝餅」の類似商品の販売が原因で、福岡市東区の中西泰治容疑者が逮捕されたというニュースを見ました。

 

これは、「商標権侵害とは何か」ということについて一般の方が学ぶ良い機会であると同時に、商標法の勉強をしている人(無味乾燥な勉強が楽しくなります!多分・・・)にもわかりやすい事例なので取り上げたいと思います。

 

まず、この男性が逮捕された原因は、神社境内や商業施設の駐車場に露店を出した際に、太宰府梅ケ枝餅協同組合の登録商標である「梅ケ枝餅」に似た商標を印刷した包装紙や横断幕を無断で使ったためです。

 

面白いのが、この男性(福岡県西部移動商業協同組合?)は、「桜ケ枝餅」について商標登録を受けていました。ですから、それを使えばいいのに、有名な商標である「梅ケ枝餅」を勝手に使っていたんですね。

 

しかも、文字を微妙に崩して似せています。

 

そして、極めつけは「崩し文字なら大丈夫だろうと思った」と容疑を否認しているとか・・・。

 

 

もう、根本的に「商標法」について誤解していますね。

 

「自分が商標登録していれば他者の商標権の侵害にならない」だろうと思っていたことが容易に見て取れます。

 

考えが浅いってば!

 

商標法はそんなこと絶対に許しませんよ。

 

 

「梅ケ枝餅」と「桜ケ枝餅」についてですが、商標登録の審査の場では通ってしまったけど、裁判に持ち込まれた場合、梅と桜の違いしかないから、類似商標と認定される可能生は極めて高いといえます。

 

そして、指定商品は「もち」で同じ。

 

 

ということは、明確な商標権の侵害です(商標法37条2号)。

 

崩し文字なら大丈夫なんていう理論は通用しません。

 

第三十七条 次に掲げる行為は、当該商標権又は専用使用権を侵害するものとみなす。
一 指定商品若しくは指定役務についての登録商標に類似する商標の使用又は指定商品若しくは指定役務に類似する商品若しくは役務についての登録商標若しくはこれに類似する商標の使用
二 指定商品又は指定商品若しくは指定役務に類似する商品であつて、その商品又はその商品の包装に登録商標又はこれに類似する商標を付したものを譲渡、引渡し又は輸出のために所持する行為

 

太宰府梅ケ枝餅協同組合は、「桜ケ枝餅」商標の登録を無効にする審判を請求することも出来ますし(商標法46条の2)、不使用取消審判を請求することも出来ますし(商標法50条)、不正使用取消審判(商標法51条)を請求することもできます。

 

どうせなら太宰府梅ケ枝餅協同組合は、無効審判を請求して、商標権を消滅させた上で、さらに損害賠償を請求して過去の損害を賠償してもらうと、気もち良いのではないでしょうか。

 

もちだけに・・・。