車の偽エンブレムの製造・販売と購入者の責任【商標権侵害】

「高級車の偽エンブレムを販売したとして、商標法違反容疑で逮捕」という報道を見ました。

こんなニュース、良く見かけます。

 

よく見かける理由、つまり、偽エンブレムが何度もいろんな人によって作られる理由はと言うと、

①簡単に出来る
②よく売れる

ことが原因だと思われます。

 

罪が軽いからではありません。商標権侵害の罪は重いですから。

 

購入する行為にも危険が伴います。

ここで、行為別にどんな罪に当たるのか見ていきましょう。

 

偽エンブレムの製造と販売行為

商標権者と何の関係もない人が勝手に車のエンブレムを作って販売しても、直接的に商標権の侵害とはなりません(商標法25条)。
しかし、その偽エンブレムを購入した人が車に付すことになりますよね。

したがって、偽エンブレムを製造・販売した人は、「指定商品について登録商標の使用をさせるために登録商標を表示するものを譲渡し、引き渡し、または譲渡若しくは引渡しのために所持する行為」をしたとして、商標権侵害の罪に問われることになります(商標法37条6号)。

 

商標法37条6号

六 指定商品若しくは指定役務又はこれらに類似する商品若しくは役務について登録商標又はこれに類似する商標の使用をさせるために登録商標又はこれに類似する商標を表示する物を譲渡し、引き渡し、又は譲渡若しくは引渡しのために所持する行為

 

この場合、五年以下の懲役若しくは五百万円以下の罰金に処し、又はこれを併科されることとなっています。

 

車の改造業者が偽エンブレムを購入し、車に付す行為

まず、車の改造業者が偽エンブレムを別の車に付す行為は、商標権の侵害に該当します(商標法25条)。
この罪は非常に重く、十年以下の懲役若しくは千万円以下の罰金に処し、又はこれを併科することとなっています(商標法78条)。

 

改造業者でなくとも、知人に頼まれて、対価を受け取って何度もそのような行為をしていると、同様の罪に問われます。

 

改造業者が偽エンブレムを使用するために所持する行為は、「侵害とみなす予備的行為」に該当する可能性があるので(商標法第37条5号)、この場合にも改造業者は商標権侵害の罪を犯したことになります。

商標法37条第5号

五 指定商品若しくは指定役務又はこれらに類似する商品若しくは役務について登録商標又はこれに類似する商標の使用をするために登録商標又はこれに類似する商標を表示する物を所持する行為

個人が偽エンブレムを購入し、自分で車に取り付ける行為

個人が偽エンブレムを更にどこかで販売するために購入する行為(たとえばメルカリなどで転売)は商標権の侵害となります(商標法37条6号)。

 

しかし、自分の車に付けるために偽エンブレムを購入し、自分でその偽エンブレムを付けるだけなら商標権の侵害とはなりません。

 

ただし、その偽エンブレムを付けた車をレンタルするなどしてお金を取っている場合には商標権の侵害となる虞があります。

 

また、偽エンブレムを取り付けた車をオークションで販売する行為も商標権の侵害となる虞があります。

 

偽エンブレムの商標問題まとめ

 

以上見てきたように、偽エンブレムを販売する行為もその偽エンブレムを業として車に付す行為も、更には、偽エンブレムを付した車を業として使用する行為も商標権の侵害となる可能性が高いので、”悪そうなことはしない”が鉄則です。

気軽にできるお金儲けですが、その罪は驚くほど重いのです。