韓国の教育熱と未成年による発明

学歴社会韓国の教育熱は世界中で有名です。

少しでも良い大学に入学できるように、習い事や塾通いは当然ですが、最近では理工系大学や「発明英才コース」入学に有利になるように、幼いうちから特許を取得する子が増えているといいます。

私は小学生に工作教室で教えたことがありますが、子供たちの発想は柔軟で、大人とは全然違うなと驚くことはしばしばあります。普段は目立たない子でも、黙々とオリジナルの発明を創り上げていたり、勉強は好きじゃないけど工作だと目を輝かせて授業に参加したり・・・子供たちはみんな発明の天才だなと思っています。

・・・が、しかし!

 

0歳で発明は出来んだろー!!!

 

韓国で急増している子供の特許保持者の中には、0~2歳の赤ちゃんがいるそうです。

いや、無理だから。

せめて、会話ができるようになってから・・・。

 

まあ、当然この赤ちゃんが発明したわけではなく、親がわが子の受験が有利になるようにと考え自分のした発明の発明者にしてしまったのでしょう。

上記リンク先記事によると、特許取得後に問題になっている事例としてこのような例が載っていました。

今年8月には、忠清北道のある私立大で、教授が自分の研究に参加もしていなかった息子の名前を共同特許者に入れて出願していた。教授の息子は、後にその特許取得を反映した受験スペックで短大の医科大学に入学したのだが、入学後これは息子本人の実力ではないと問題になり裁判沙汰にまで発展した。結局、2審で懲役10カ月執行猶予2年の刑が言い渡されている。

なお、上記記事では、

諸外国の多くは、発明者本人以外の登録は厳禁であり、アメリカなどは「本人の発明ではないと発覚した場合、刑事罰に値する」という誓約書にサインしなければならない場合もある。
日本の特許法によると、発明者でない者やその発明について特許を受ける権利を承継していない者が出願し、特許を受けることは第49条6号で禁止されている。また、万が一権利を承継していない者が申請した場合は、第123条1項6号により無効になると記載されている。このことから、日本や外国では韓国のような「裏技」を使って子供の受験スペックを上げることは不可能となっている。
(中略)
本当の発明天才児が、名前だけの発明家たちに埋もれてしまう前に、審査の強化と制度の見直しを行うべきである。

とありますが、記事を書いた人が韓国特許法について勘違いしているようです。

韓国特許法にも日本国特許法と同じような規定はあります。特許を受ける権利を有しない者または特許を受ける権利を承継していない者が出願し特許を受けることはできません(韓国特許法第33条、同62条、同133条)。

韓国特許法や審査制度に問題があるから「発明者の子供による出願」が起きているわけではないでしょう。
ニューズウィークの記者はミスリードしないでほしいです。

日本でも韓国のように親がした発明を子供が発明したと偽って子供の名前で特許出願をすることはできます。
でもそういうことをする人が少ない(いないと言い切るべきかもしれない)のは、親が良かれと思ってしたことが仇となってしまうことを恐れたり、そもそも発明者になることを名誉と思っていないとか優遇される状況にないとかそういった事情がありそうです。

子供が小さいうちからユーチューバーになることを望まない親が多い(若気の至りで取り返しのつかないことになる危険性を考えると、私も本人がよほど望まない限り反対です)日本では、幼いうちに発明者になって妙に注目されてしまうことを嫌がる親も多そうです。

結局、特許法制度の違いというわけではなくて、教育熱やお国柄の違いなんじゃないかと思います。

日本でも教育熱が高まると、韓国と同じようなことが起きるかもしれません。

その場合、自分がした発明を子供の名前で特許出願するかどうかは親のモラルであり、特許法制度に問題があるわけではありません。

もちろん、本人が発明をしていないのに発明者に名を連ねることを防ぐために新しい規定が出来ることは良いと思います。発明者証みたいな感じかな?

特許権を財産権ではなく、人格権として見ることが出来た興味深いニュースでした。